肩関節のリハビリの考え方、痛みや上がらない状態から理学療法士ができることについて解説します!
- 肩関節が問題か、他に問題があるのか評価でつぶしていく。
- 肩関節のROM拡大だけがゴールではない。
- 生活で必要な動作に応じた目標を立てる。
- 自分で管理できるように説明し理解を得る。
- 自主トレーニングは簡単で低負荷なもので継続を狙う。
- 二次的な問題の場合は予防できるように指導する。
肩関節のリハビリについて苦手意識があるセラピストは多いですよね。
今回は肩関節疾患の患者様を診るときにどう考えればいいのか、その理由は?
私の経験をもとにご紹介します。
※この記事は評価方法や治療方法に関するものではなく、肩関節疾患を診る上での進め方や考え方についての記事になります。評価方法や治療方法が知りたい方は一番最後におすすめの本をご紹介しています。
肩関節に問題?それとも他に問題がある?
どこを診るか?
外傷後や術後は肩関節構成するもの自体に問題がありますが、肩関節周囲炎などの肩関節疾患は肩関節に問題があるか、他に問題があるか評価する必要があります。
評価方法はさまざまなのでここではご紹介しませんが、
✅どんな時にどこに痛みがあるのか?
✅どの動きに制限がかかるのか?
この二つをチェックしましょう。
痛みを再現した時の肩関節の動きやその時の姿勢も確認し、一つずつ評価をして問題をつぶしていきます。
「問題があるのは肩関節だけなのか?」と疑ってかかるが大事。
静止している状態や問題となる動きをした際、
✅頭の位置は?
✅肩甲骨の位置や動きは?
✅胸郭・脊椎の変形や動きは?
✅骨盤の位置は?
✅重心の位置はどうなっているか?
などなど…
肩だけでなく、アライメントや身体全体の動きを見るようにしてみましょう。
それはなぜか?
経験から話すと、私は以前から左肩関節周囲の筋力低下があり左肩関節に制限があります。
これは学生時代に左足を何度も損傷した際に数カ月免荷期間があり、それにより左半身の筋力低下に至ったからです。
私のように長年の姿勢の変化が原因ってときもありますからね。
これまでの経験上、特に肩関節周囲炎は姿勢が悪くなって二次的に起こっていることが多いです。
肩関節挙上できればすべて良し?
「肩の可動域が上がればそれでいいのか?」
この問いは、整形外科に勤めていた時に上司に言われた言葉です。
確かに術後は拘縮予防のためにも関節可動域の拡大が必要になります。
しかし、外来などで対応するような慢性期に近い肩関節疾患の方は「関節可動域の拡大」だけがゴールではありません。
医師は可動域のことをよく気にされますが…。
前述したように、
✅どんな時にどこに痛みがあるのか?
✅どの動きに制限がかかるのか?
患者様は日常生活や仕事での動作の痛みや可動域制限に苦しんでいます。
ということは、「どれだけ上げられるか」ではなく、「問題となっている動き、痛みが改善されたか」が大事なのです。
問題となっている生活の動作を知る
「どんな時に、どんな動きで痛みますか?」
「困っていることは何ですか?」
この問診が出来ていますか?
患者様が改善したい動きをしっかり確認しましょう。
私が出会った患者様で特定の動きが痛いという方は多かったです。
例えば、
「長時間パソコンをしていると肩が痛くなってくる。」
「夜間寝ているときが痛い。」
「シンクを洗うときに痛い。」
「身体を洗うときに痛みで後ろに手が回せない。」
患者様によって悩みはさまざまですよね。
セラピストに依存させない
よく患者様で、セラピストに依存してしまう方がいます。
「マッサージをしてほしい。」
「トレーニングしてほしい。」
「やってもらう」ことが当たり前になってしまうと、一向に良くなっていきません。
なぜなら、たった数十分のリハビリの時間でしかやらないからです。
外来なら尚更ですね。
「自分で管理する」
これが出来る患者様は治癒や緩解が早い傾向があります。
繰り返さないためには『自己管理』が一番です。
そのためには「なぜ、そうなっているか」原因を説明し、自分で管理することの大切さを理解してもらうことが必要ですね。
トレーニングの注意点
トレーニングで主に行うことは「筋力トレーニング」「関節可動域訓練」「ストレッチング」ですね。
特に「筋力トレーニング」で大事なのは低負荷であること。
よくセラバンドや重錘を用いてトレーニングさせている場面を見るのですが、多くの場合は高負荷によって代償が入り他の部位に痛みが出てしまったり、つらくて訓練を続けられないことがあります。
負荷量が強すぎて代償動作が出現してしまうと、目的とする部位のトレーニングにならないですよね?
特に自主トレーニングは、
「低負荷」
「簡単」
「継続できる回数」
この3点がクリアされているかが重要です。
予防できるように指導する
術後も同様ですが、患者様の普段の生活習慣を一緒に確認しましょう。
「何が問題となるか?」将来的に二次的な疾患につながらないように指導し、自分で予防してもらうことが大事です。
そのためには、「なぜ、予防する必要があるのか」を説明して理解してもらうことが必要ですね。
「治れば終わり」ではなく、将来のことも見据えてリハビリを行いましょう。
肩関節疾患のリハビリおすすめ本
運動のつながりから導く肩の理学療法
運動機能障害の「なぜ?」が分かる評価戦略
骨折の機能解剖学的運動療法 総論・上肢
まとめ
前述したように、この記事では具体的な評価方法や治療方法に関しては解説していません。
なぜなら、評価方法や治療方法は本やセミナーで勉強できるからです。
若いセラピストは知識や技術を得ることばかり躍起になり、「考え方」が後回しになって「思考過程」が飛んでしまっていることがあります。
以前の私もそうでした。
知識や技術ももちろん大事ですが、点と点が線になるように「考える」ことで視野も広がります。
- 肩関節が問題か、他に問題があるのか評価でつぶしていく。
- 肩関節のROM拡大だけがゴールではない。
- 生活で必要な動作に応じた目標を立てる。
- 自分で管理できるように説明し理解を得る。
- 自主トレーニングは簡単で低負荷なもので継続を狙う。
- 二次的な問題の場合は予防できるように指導する。
この考え方が日々の臨床の参考にしていただけると幸いです。
それでは、また!Fin.📹